『宿命 <よど号>亡命者たちの秘密工作』(高沢皓司著 新潮文庫 平成12年8月)を読んだ。朝鮮(DPRK)中枢が深くかかわっている日本人失踪事件の真相を解明する説得力あるルポルタージュである。
『宿命』によれば、この事件を考えるとき押さえていなければならないことは次の諸点のようである。
朝鮮(DPRK)における「事実」とは「こうこうである」ではなく「こうこうでなければならない」である。だから彼等が得々と語る「事実」は、私たちから見ると「嘘」としか思えない。金日成の出生伝説などもその例だ。
- 「よど号」亡命者たちは、広大な招待所、通称「日本人革命村」で、指導員、服務員、メイド、料理人、洗濯、掃除、ベッドメイキングを担当する接待員、自家発電管理技術者、医者と看護婦、保母など100人近くの人員の奉仕、極上の豊富な食料の提供を受け、専任運転手つきのベンツ数台まで支給されるといった「宮廷」生活を送っている。
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「よど号」亡命者たちは、強靭な意志と不抜の理論武装をほこる自分たちがわずか1、2年の間にチュチェ思想に心酔するようになった体験から、どんな人間でも朝鮮(DPRK)で「学習」すればみな金日成主義者になる、と確信していた。
- 朝鮮(DPRK)がかかわっている(あるいは、「とみられてきた」)日本人失踪事件は1970年代後半から80年にかけてのわずか数年の間に発生した。
- 同失踪事件の犯行場所は、ヨーロッパに始まり、次に日本に移った。
- ヨーロッパでの事件は「よど号」亡命者の結婚相手の獲得が中心だった。
- ヨーロッパから誘拐された女性たちは思想教育を受けてチュチェ主義者に変身し、「よど号」亡命者の妻となり、子どもを産んだ。
- 亡命者たちは、こどもができて以後、ヨーロッパに進出しさまざまな活動に従事するようになった。子どもと妻が人質になっているのである。
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当時、朝鮮(DPRK)はヨーロッパで大使館ぐるみの麻薬と密輸による経済活動を展開していた。ヨーロッパ各国政府はこれに強く抗議し、デンマークは朝鮮(DPRK)外交官の国外追放(1976)を断行したほどだった。
朝鮮(DPRK)は日本を金日成主義・チュチェ思想を奉戴する国に変革させる=チュチェ思想による日本革命を遂行させることを目的として、「よど号」亡命者たちに「自主革命党」を結成させた。「自主革命党」は組織の拡大強化と日本国内で活動を追求した。
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妻たちは、顔が割れていないことを生かして、夫の代わりにヨーロッパに進出しさまざまな活動に従事した。自主革命党員獲得のために日本人男女の誘拐にも積極的に加担した。
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日本での日本人男性失踪事件は「よど号」亡命者の「安定した国内活動」と「自由な国外移動」を可能とする「戸籍」獲得が目的だった。
- 亡命者の一人柴田康弘は十数年前に朝鮮(DPRK)に帰国している「中尾晃さん」に成りすましニセ旅券で日本への侵入を繰り返していた。
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「よど号」亡命者の妻たちは、亡命者たちの日本国内での活動の基盤づくりなどのために、合法的に保持しているパスポートを利用して日本と朝鮮(DPRK)をなんども往復していた。1988年8月外務省は「よど号」亡命者の妻たちに「旅券返納命令」を出し、以後この合法旅券は使えなくなった。